実践を交えて様々なコミュニケーションスキルを習得する、ラーニングの多い授業だった。
しっかり設計された充実したコースで、カバー範囲も広い。以下、シラバスよりトピックを抜粋。
・Communication Strategy
・Cross cultural Communication
・Presentation Structure and Visuals
・Visual Aids and Nonverbal Delivery
・The Writing Process/Macrowriting
・Style, Tone, and Microwriting
・Corporate Communication
担当は、Paul Argenti教授。以前、過去の日記にて紹介しており、詳細はこちら TIME MANAGEMENT 「重要領域で生きる」を参照。ちなみに、Argenti教授は、メディアで取上げられることも多く、Financial TimesやWall Street Journalなどの有力紙へ記事を投稿したり、NPR(公共ラジオ放送)やCNBC(ニュース通信社ダウ・ジョーンズと、米大手テレビ局の1つであるNBCが共同設立したニュース専門放送局)のコメンテーター役としてしばしばゲスト出演している。
参考:
-NPR's All Things Considered - 10/26/05
"Health Care Memo Further Tarnishes Wal-Mart"
従業員のコストカットを謳うウォルマート社の内部メモについて、Argenti教授がコメント
基本的な会計処理:リースを計算する方法?
※余談ですが、Tuckには、大学の広報を担当する部署(Public Relations)があり、Tuck教授による新聞・雑誌への寄稿記事・インタビュー等、全米の主要ニュースをピックアップして、学生に定期的にメール配信してくれます。上もその例。(まあ、高い学費払ってますから・・・)
では、ポイントをかいつまんで、解説。
Communication Strategy
企業には、市場環境に対応するための長期的な方向付けを行う経営戦略というものがあるように、様々なステークホルダー(従業員、顧客、株主、規制団体、その他)に対して効果的なメッセージを伝え、円滑で透明性の高い企業経営を行うための、コミュニケーション戦略というものがある。
・エンロンの会計粉飾疑惑
・マーサ・スチュワート(料理・ガーデニングを初めとした、快適なライフスタイルを提案する、カリスマ女性経営者)のインサイダー取引疑惑
・三菱自動車工業のリコール隠蔽事件
などの例を出すまでもなく、コミュニケーション戦略は、企業の業績を大きく左右し、そのあり方がますます問われている。
ここで言うコミュニケーション戦略とは、単に素晴らしい商品のキャッチコピーを考案したり、会話レベルの小手先のコミュニケーションテクニックを覚えることではない。経営環境が刻々と変わる中で、
「企業が危機に陥ったとき、如何にして、組織を動かし、問題解決につなげていくか」
「如何にして、顧客を初めとしたステークホルダーに適切なメッセージを送り、長期的なリレーションを構築・維持していくか」
「文化・言語・生活様式が異なる諸外国の企業とビジネスを行うに辺り、何に注意を払い、どのようにビジネスを進めていけばよいか」
戦略的な優位性はどのように達成されますか?
についての、トータルなコミュニケーションの仕組み作りを経営の観点から考え、具体的な実現手段へ落とし込んでいくこと、を指す。
コミュニケーション戦略を考えるに当たり、授業では、その構成要素である、
・Communicator戦略 (コミュニケーションの目的、スタイル、信頼の構築の仕方)
・Audience戦略 (オーディエンスの特定、分析、説得の仕方)
・Message戦略 (伝えるメッセージの内容、文章表現)
・Channel Choice戦略 (メッセージ媒体の選択、及び、受取るメッセージのハンドリング)
・Cultural Context戦略 (文化的側面の分析・検討)
についてそれぞれ学んでいった。以下、Communication Strategyにおける主要ファクターとその関係を図解。
Communicator戦略における、信頼性構築について補足。ステークホルダーに理解・納得・行動してもらうためには、信頼を獲得することが大切です、という話。具体的には、Rank、Goodwill、Expertise、Image、Common Groundで持って、そのプロセスを進めていく。
ダイムラーはクライスラーの前に他のacquistionsを見た
が、僕は授業で解説したImageには若干異議を唱える。Imageとは、企業やCEOが「はい、当社のイメージはこうですよ」と直接売込むものではなく、あくまでもステークホルダーが最終的に決めるものだと思っている。つまり、企業は成果(上ではExpertiseといっているが、要は専門性を発揮し、成果を出すということ)を上げ、透明性(アカウンタビリティ)を高めることで、ステークホルダーはその企業に対してプラスのイメージを持ち、それによって、企業は信頼を獲得することができる、ということではないだろうか。
さて、どうすれば、コミュニケーション戦略がうまく機能したと言えるのか。ひとつの判断として、テキス� �に以下の通り紹介されている。
"You are only successful only if your message results in your desired response from your audience."
(メッセージを相手に伝えた結果、その相手から望ましいレスポンス(回答、行動、振舞)を受け取ったときに、初めてコミュニケーションは成功したといえる)
引用 : Mary Munter, "Guide to Managerial Communication" (Prentice Hall)
これ以上でもこれ以下でもないだろう。
望ましいレスポンスを受け取るということについて。例えが適切ではないかもしれないが、前職で中国のITベンチャーと仕事をする機会があった。日本で設計したソフトウエアを上海で開発するオフショア開発プロジェクトだったが、コミュニケーション管理の一環として、ビデオ会議システムを利用して、東京―上海間で毎朝進捗会議を開いた。東京からの一方的な仕様説明で終わらせるのではなく、説明後、上海のエンジニアが正しく理解したかどうか、伝えた内容をその場でエンジニアに説明(口答、もしくは筆記で)して貰うだけの単純なものだったが、これも上で言うところの"望ましいレスポンス"が得られたかどうかの重要な確認プロセスだったと思う。
以上、超圧縮な 要約で恐縮だが、締めくくりとして、授業のスライドで取上げた、経営学の父、ピータードラッカー氏の言葉を紹介。今後、企業のトップマネジメントにとって、コミュニケーション戦略は重要な任務の1つになる、とのメッセージ。ドラッカー氏は昨年11月に逝去(享年95歳)したこともあり、この言葉がクラスで取上げられた際は、とても感慨深いものがあった。
"One of the most important jobs ahead for the top management of the big company of tomorrow… will be to balance the conflicting demands on business being made by … the corporation's various constituencies: customers, shareholders (especially institutional investors and pension funds), knowledge employees and communities." - Peter Drucker
(大企業のトップマネジメントにとって、今後、重要となる任務の1つは、顧客、株主、従業員、コミュニティなどのステークホルダーが投げかける対立する要求を、うまく調整していくことにある。)
ピーター・ドラッカーは本当に偉大な方でした。
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